カンパーニュに特化してみる。

in 思考の果実

ベーグルの売上が下がってしまってから、僕らは「ちがうパンもシリーズ的に売ってみよう」と考えた。それまでは喜多野安心市ではかなりベーグルに特化していた。最初はあれもこれも並べるよりも絞ったほうがいいと考えていたし、そもそもそんなにたくさんの種類のパンをつくる技術も時間もまだまだだったから。でも、「ベーグル屋」となるよりやっぱり「パン屋」でいたいし、ジャンルは4,5種類くらいに絞るかたちで新しいジャンルのパンも売っていこう。そうふたりで話し合った。

素直に夫婦で思いついたのは「カンパーニュ」だった。僕らが一番最初に本を読みながら焼き始めた田舎パン。丸い塊ではち切れるように膨らみ、ハードパンながらもその厚さゆえにけっこうやわらかいパン。原点に戻ってカンパーニュシリーズを立てていこうと考えた。

いろんなカンパーニュを焼いてます。形は不格好。

喜多野安心市はいろんな農家さんや漁師さん、お惣菜屋さんやお菓子屋さんパン屋さんが集まるマーケット。そこにはパン屋は5,6件入っていた。うちハード系のパン屋はうちを含めて2件だけで、ほかはみんなイースト使用のふわふわした菓子パンや食パンを売っていた。
だから、食パンで勝負してもおそらく勝てない。し、普通の食パン型で普通の食パンを焼いたとしても、なんだかそんなに楽しそうに感じられない。その点でもカンパーニュは都合が良かった。他店と差別化が図れて、店自体に「多様性」が生まれると思ったから。(ベーグルもぜんぜんなかったので、これはこれで店の棚に多様性が生まれていた)

また、もう一件のハード系パン屋さんも、自家製天然酵母ではなくて市販品の培養された天然酵母を使われているので、天然酵母と言えどもけっこう柔らかい。だから、もしかしたら「本当のハードパン好き」の人がこの店で食べたいと思えるパンは買えていないのではないか。ニーズは見えていないだけで、どこかにいるのではないか。どっしりと詰まっていて、噛みしめて味わえるパン。おかずと食べて美味しいパン。そういうの地道に売っていけたらと考えた。

そして、やるなら我が家名物だった「クミンのカンパーニュ」と「トマトとチーズのカンパーニュ」を売りたい。ともに僕達が最初に読んだパンレシピの本に書いてあったパン。どちらもまず普通のパン屋で味わうことがないであろう独特の味がして、大阪時代はいろんなパーティーに持っていっては喜ばれた。おかずにも合うし、お酒にも合う。
トマトは原価計算がちょっと厳しく、カンパーニュの「値ごろ感」を飛び出てしまいかねず、これから商品化できるかどうかが未知数。でも、クミンのカンパーニュはさっそく売り始めた。
クミンはカレーに使われるスパイスのひとつで、クミンの種をそのまま生地に練り込んでいる。ふわっとカレーの香りが漂い、食欲を掻き立てるパン。クミンの薬効は食欲増進や消化促進、抗がん作用などがあると言われていて、とても身体によい。スライスしてさっとオーブンで焼いたら、ビールなんかのお酒にも合う。チーズやハム、野菜など載せてオープンサンドにしても吉。食べ飽きないクセのあるパンだ。

クミンのカンパーニュ。病み付きになる味。

あと、ライ麦を加えたカンパーニュやレーズンをできるだけ多く入れたカンパーニュもつくった。具材を入れるととたんに原価が上がる。原価が上がると価格も上がる。カンパーニュの「値ごろ感」を守り、できるだけ買いやすい価格を追いかけながら、より多くの人にパンの味を楽しんでもらえたら嬉しい。

思考の酵母: