やりたいことで、やっていこう

in 思考の果実

6月からベーグルをやめてカンパーニュばかりを焼いていたところ、先々週いきなり「予約」というものが初めて入った。喜多の安心市に卸してるレーズンのカンパーニュをホールで3つ。僕に電話で問い合わせたかったが連絡先がわからず、ネットで検索しても出てこなかったから、店に「次に焼いて持ってくるときに3つとっといて」という予約を頼んだ、とのことだった。
そうか、予約か。それだと欲しいパンが欲しい分だけ手に入るから、たしかにいいな。こっちも売れ残るということがなくなるし。そう思って焼いて納品した。

 

するとついこの間の夕方、突然見知らぬ番号から電話がかかってきた。

出ると、喜多野安心市でその予約してくれた人だった。高齢の男性だった。

こないだ予約させてもらった者です。森口さんのパンはいつもとても美味しい。牛乳も卵も油も砂糖も入っていない、粉と塩と酵母だけの、あのどっしりとした味がとてもいいです。あの玄米甘酒酵母というのはご自身でつくられてるんですか? それがいいんですね。森口さんのパンを食べると、力が湧いてくる気がするんです。ぎっしり詰まってる生地がとてもいいです。徳島県のパン屋は柔らかいパンばかりで、膨らんではいるけど逆に言うと粉が少ないので、すぐお腹が空く。でも森口さんのパンを朝食べるとずっと元気でいられる気がする。ありがとう。

という電話だった。

 

感激した。泣きそうになった。

たぶん「パンは『おやつの仲間』である」という認識のほうが強いと思われるこの徳島で、餡やクリームやジャムのような、お菓子みたいな具材を入れないパンを焼く、という姿勢は果たして正しいのだろうか。柔らかいパン欲しい柔らかいパン欲しいと結構言われる中で、「サラダや肉料理や魚料理といっしょに食べるような、ハードな食事パン」を焼いて売るというやり方で、繁栄できるのだろうか。そんな不安と、「いや、ウチはいままでこのパンを焼いてきたんだから、このパンを自分らが食べたくて焼き始めたんから、この素材、この食感、この味でいこう。やりたいことで、やっていこう」という根拠のない自信の両方を、静かに、うすら重く纏いながら、6月はデザインをしながらパンを焼いていた。

でもこの日、「これでいい」じゃなく「これがいい」という声を直接聴かせていただけた。会ったこともない人から、僕のパンを食べると力が湧いてくる、と何度も言われた。もう嬉しくて嬉しくて。

これがその方が予約したレーズンカンパーニュ。けっこうレーズン入れてる。グラムにして生地量の45%くらいのレーズン。トーストしたら最高。