大量生産メディア時代の終わり

in 思考の酵母

複雑なものを、複雑なまま評価すること。こんな当たり前のことが、ようやくできる時代になった。安価かつ大量生産されるメディアを一般大衆に届けることで成り立っていた出版産業(週刊誌、文庫、新書など)の全盛時代は、終わったと言ってもいいと思う。これからは「限られた人に、限られた情報を届け」、メディアを媒介に人や情報の多様な流れをつくる時代ではないか。

商業出版に携わる編集者がこれまでやってきたことは、専門分野の著者の言葉を、大量生産メディアを通じてより多くの人々(大衆)に届けるという仕事だった。しかし、これからの時代の編集者の仕事は、ある限定されたコミュニティで交わされる情報の流路やメディアのかたちを戦略的に生み出していくことだと思う。

本誌編集発行人の仲俣暁生さんと一緒に、昨年よりローカルメディアにまつわる講座を続けてきたが、その流れの中で、地域デザイン学会でローカルメディアフォーラムというものを立ち上げることになった。12月2日には、荻窪・6次元で第一回目のフォーラムが開催されるので、ご興味ある方はぜひ参加してもらいたい。

ローカルメディアの隆盛は、一過性のブームではなく、マスメディア研究の枠内を超えて、「人間の感覚を拡張する技術」としてのメディアの本質を指し示してくれるものだと思う。僕たちは、情報を一方的に大衆に届けるマスメディアを前提とした「メディア」の考え方を捨てて、人と人が相互に情報を交わし、異なるコミュニティをつなぐ広義の「メディア」を考えるフェーズに立ち会っている。「ローカルメディア」のブームは、メディアの価値観を新たにするためのきっかけにすぎない。ツイッターか、インスタグラムか、などなど、1〜2年で覇権が入れ替わるソーシャルメディアの勢力図に右往左往している場合ではない。

群雄割拠のメディア戦国時代を楽しく乗りこなしていく、そんなツワモノが各地で生まれては消えていく、それらの生を看取り、場合によってはプレイヤーとしてアリーナに参戦する、そういう、編集や出版の仕事にこれからも携わっていきたい。

 

第7回 地域のクリエイティブはどこにある? マガジン航[kɔː]