ノンバター

in 思考の果実

砂糖無し・バター無しのシュトレンづくり。ことの発端は妻の体調からはじまっているが、よく考えたら砂糖は摂らないほうがいいに決まってるし、乳製品アレルギーの人にもニーズがあるかもしれないこのシュトレン。とにかくいろんな方向で試作を行い続けた。

まず砂糖。そもそも僕らは甜菜含蜜糖という大根から作られた糖でシュトレンをつくる。だから外側の衣は真っ白というよりほんの少しベージュ。「見栄えのよさ」ではなく「健やかな食材をできるだけ使いたい」という考え方を優先させるためだ。味も精製糖よりもいい。

いろんなところを調べていると「外側の白い砂糖の衣ははったい粉で代用」というのがあった。これはちがうと思った。それをやってしまうとシュトレンじゃないような気がする。
じゃあ、砂糖をまとわないシュトレンにすれば、と妻は言った。でも、それもシュトレンじゃない気がする。クリスマスという前提が崩れてしまうような印象を受けると思った。中身には砂糖は入れない。外側は一応は砂糖でくるむ。そして、砂糖を摂りたくない人は砂糖をナイフで削り落として、中身を食べればいいのではないか。中身がノンシュガー。妻との話し合いの結果、砂糖問題はそういうことに落ち着いた。

問題はバターの代用だった。僕らがもともと使っていたのは「グラスフェッドバター」という、牧草のみを食べて生きている牛から絞った乳でつくったバター。遺伝子組み換え資料や抗生物質・ホルモン剤を一度も口に入れていない牛からつくったバターじゃないと嫌。これは最初から妻のこだわりで、ほうぼう探してニュージーランド産のを買って使っていた。
単純に菜種油とかじゃあダメなのか。そう妻に聞いてみると、どうしても捏ねたあとの段階で、生地の内部から表面に向けて油が浮いてくる、発酵させていたら外側がベタベタしてちがうモノになってしまうからダメだ、と言うのである。

そうか、それはつくってる本人が経験則から言ってるのだから、少なくともウチの製法ではそうなのだろう。しかしだからと言ってココナッツオイルを使うとコストが高くついて商品にならない(オーガニックのココナッツオイルじゃないと品質が信用できないし)。どうしたらいいだろう、とさらにそこから考えあって、「オーガニックトランスファットフリーショートニング」を使った。

これは何かというと「トランス脂肪酸が入っていない植物油由来の半固形油脂」だ。最近よく「マーガリンはトランス脂肪酸が入ってるから体に悪い」と言われているが、あの発がん性物質のトランス脂肪酸が入っていない、植物油でできたバターのようなもの。これだと、有機JAS認証だから体に安全で、乳製品ではなく、捏ねても菜種油のようにはならないはずだ。

しかして砂糖無し・バター無しのシュトレンがつくられた。そして、夫婦が揉めたのはここからだった。

(つづく)