農地の拡大

in 思考の果実

森口家は現在、農地の拡大に努めています。

事の発端は、僕が次の仕事の資料のひとつとして「シティ・ファーマー 世界の都市で始まる食料自給革命」という本を借りてきたことだった。
この本の内容は端的に言うと「現在の農業は『できるだけ大きいサイズで均一な形の野菜を、いつでもどこでも買えるように』という市場の要求に答えるための仕事になっている。それから脱却し、安心・安全な食料を手に入れるためには、あなたの身の回りを活かしてあなたのために野菜を育てればいい」という内容の本だ。それを実行に移している世界各国の都市の実例を取材してまとめた本だった。
これを読んだ妻がいたく感動。「そうや!家からすぐのあの耕作放棄地っぽい空き地も、あの耕作放棄地っぽいよくわからないところも、どんどんウチらの畑にしたらええんや! もう先に勝手に開墾してしもたらええんや!」と言い出したのである。

ここ中山間地域の限界集落・神山町に引越してきてから感じたことのひとつとして、「意外と自分たちが使える農地が少ない」というのがある。どういうことかというと、中山間地域というものは平地が少なく、川に沿って棚田や段々畑がつくられている場合が多い。それならそれでいいのだが、かつて「林業が発展していた中山間地域」だと、その棚田や段々畑に杉を植えてしまっているため、田舎なのに田畑が意外と少ないのである。
これは以前引越し先最有力候補として上がっていた奈良県の東吉野村でも感じたことだった。空き家はものすごく大きい。いろんな仕事が新たにはじめられそうだ。素敵な同世代の人達も多い。でも、最終的に妻が移住NGを出した理由のひとつとして、東吉野村には借りれる農地が全然無かった、ということが挙げられた。いや、借りれるどころか農地そのものがどっからどう見てもすごく少なかった。役場の人に聞いてみたら、かつては日本有数の林業で栄えた町だったので、みんながみんな林業に従事してて、それで稼いだお金で食料を買うことで成り立っていたから、農業で生計を立てる人自体がとても少なかったのではないか(結果として農地が少ない)、とのことだった。

ここ神山町もそういうケースに納まるのかどうかわからないが、やっぱり林業で栄えた町なので、やっぱり農地が少ない。若者の移住者は多いのに、農地が少ないので、下手したら「限界集落なのに畑が無いから都会のマンションと同じようにプランター栽培をせざるを得ない田舎」なんじゃないかとすら思ってしまう。それくらい移住者が借りれる農地は少ない。
少ないのに、耕作放棄地のような空き地を割とよく見る。ただ雑草が生えっぱなしの、日当たりがいいんだか悪いんだかよくわからないグレーゾーンのような空き地をよく見る。
家からけっこう離れた土地で、「言えば貸してくれるよ」という田畑のことを耳にすることもあった。しかし、ここ神山町は獣害がひどい。鹿、イノシシはもちろん、猿がひどい。そうなるとやっぱり、できるだけ家から近いところで田畑を設けないと対策が難しいのではないか。夫婦でそのような結論に達した。

そこで妻が言ったのは「家から近いあそこ、去年も今年も見てたけど、ずっとずっと雑草が伸びっぱなしやん。あれは多分何かの理由で誰も手入れしてない耕作放棄地やと思う。だから、アンタ持ち主調べて借りてきて」だった。

無論そんな言われ方をされたのでまた夫婦で揉めて、結果として「毎月パンを焼いて持っていくという条件で耕作放棄地を借りるお願いをしたらどうか? 赤子を抱いて行ったら我々の好感度も上がるんじゃないか」という結論に達し、持ち主を調べて話をしに行った。

持ち主の方はあっさり快諾してくれた。数年前に身体を壊してしまい、それ以降畑はほったらかしにせざるを得なかったし、これからも畑仕事ができそうにないということ。畑仕事ができないのに雑草ばかりが伸びっぱなしになってしまってて、世間体が悪くてむしろ借りてくれるのは助かるということ。それと借りる条件として、畑に植えていた数本の「カブトムシが来る樹の苗木」(おそらくクヌギ)を庭に植え替えてほしい、ということを話してくれた。自分にも息子が居て、息子が喜ぶだろうと思ってカブトムシが来る樹を家の周りに増やしたかったんやけど、畑の手入れができないのでその夢が叶いそうにないんじゃないかと思っていた、ということも聞いた。

なんだ。そんなことで借りれたのか。もっと早くから探して頼めばよかった。またそんなお子さんへの想いもこもっていたのならば、むしろ僕らが率先してきっちりと植え替えたいです。そう思った。案ずるより産むが易し。遠くから様子を見てあれこれ予想するよりも、実際に出会ってこちらの要望と相手の要望を話し合ってみる。これに限るなあ、と思った。

そして今日、その畑一面に生えていて、2mほどの高さに成長し伸びっぱなしになってしまった挙句立ち枯れてしまったセイタカアワダチソウの束を何回も抱えて家に持ち帰り、火を着けた一斗缶に長男と焼べ続けた。火遊びが大好きな長男は、「家で焚き火で焼き芋をする」というのが夢だった。一斗缶で焼き芋をつくる方法をネットで調べ、灰をつくるために耕作放棄地のセイタカアワダチソウの枯れた茎を、日が暮れても焼べ続けた。やがて一杯の灰が出来上がり、アルミホイルに包んださつまいも(我が家を借りた時に付いていた小さい畑で育てた芋)を放り込み、見事焼き芋を焼いて食べた。

大量セイタカアワダチソウの枯れ草を燃やして、焼き芋を作る。扇ぐ長男。

茎の灰。広葉樹の落ち葉よりもかさがあっていい感じ。

親子の狙い通りおいしい焼き芋ができた。