「支援者(ひと)と利用者(ひと)の関係を考える」のデザインについて

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今年初旬の話になるが、滋賀県の社会福祉法人GLOW 〜生きることが光になる〜 さんの書籍(非売品)のデザインをさせていただいた。

私は新卒で障害者授産施設に就職し、指導員として1年ほど働いた経験がある。1年働いて、「指導員」より「プレイヤー」になりたくてたまらなくなり、退職してデザイン関係の仕事を目指した。要するに1年でケツまくって逃げた……とも言えると自分で感じるところもあってか、僕の「社会福祉」に対するモヤっとした不完全燃焼感はそのあともうっすらと残ったままだった。
そんな僕の紆余曲折を経た経歴を、glowさんと関わりの深い友人のアサダワタルさんが覚えてくれていて、福祉に理解があるデザイナーのほうが、ということもあって僕にglowさんを紹介してくれたのだった。
デザインの力や企画力をつかって、いつか「誰かの福祉」をより善くできたら、と常に思っていたので願ってもない仕事だった。

最初の企画書に掲載されていたタイトルは「ひと(支援者)とひと(利用者)の関係を考える(仮題)」だった。そして、途中までできていた原稿を読ませて頂いた。すると、単なる福祉施設の活動記録やインタビュー集といった「福祉のプロ側」のための本ではなく、障害を受けている人たち並びにそのご家族の声も等しく素直に掬い上げられている本だった。
だから、まずタイトルのひらがなと漢字を入れ替えてデザインした。本の内容をできるだけ的確に表現しようと考えたら、たぶん「読み仮名」が逆で、「ひと」よりも「支援者」「利用者」という文字のほうを強めて、読者の目に飛び込ませるべきだと感じたからだ。

それから、「支援者」と「利用者」の関係は、どちらか一方がもう一方に「してあげる」ような簡単な関係などではなくて、もっとより複雑で答えのない関係性なのだということが原稿から読むことができた。
当事者同士の言葉だけでなく、利用者のご家族や元従業員や元ボランティアなどといった現場から少し距離を置いた人たちも、この本の中では「支援者」として意見を述べている。そういうところを見ると、「両者の関係」などというものは、一言では、ワンビジュアルでは到底言い表せないのではないか、と感じた。

なので、本文に掲載している「支援者」と「利用者」の言葉そのものをメインビジュアルとした。赤系で利用者の本文、青系で支援者の本文を乗せて、お互いに上も下もなく透けて重なり合うような表現とし、言葉以外のところは「両者の関係性以外のなにか=グレー」とした。


生々しいセリフが重なり合うことで「確かに誰かがそこで生きている」と受け取ることができるだろうし、逆に強弱の無いフラットな空気感から「それでも現在進行形で解決されてはいない『福祉』という課題」がそこにある、と受け取ることもできるかもしれない。そんなデザインを目指した。