仮説とトライの夏【1】

in 思考の果実

大阪で独立してからずっと、自宅でデザインの仕事をしていた。かねてから「自宅だと仕事に集中できないから別に職場を作る」という考え方はちがうと思っていたからだ。デザインはまず「考えること」が仕事で、そこから主にMacで作業をする仕事なのだから、狭かろうが広かろうが関係なく働けるはず。そう思って働いていた。

しかも独立して3ヶ月後には長男が誕生。両親の祖父母が近くに住んでいないこともあり、僕が仕事の合間に家事と育児もする必要があった。妻的にもとても都合がよかったはずだ。子どもが二人になり、長男が幼稚園に通うようになり、送迎をしてから家で仕事をする毎日になった。

そして神山町に引っ越したのが今年の5月半ば。6月から兄弟ふたりとも保育所に入れることになった。
神山町ではとにかく環境が大きく変わった。長男は引っ越ししたての頃はまだ不安定で、泣いたり叫んだりも多かったが、近隣の迷惑を考えなくて住むのでストッパー解除な状態で騒ぐままに騒がせていた。僕も引っ越ししたての頃は家の修繕や必需品を揃えることに奔走したりしていて、最初は仕事に長い時間をかけるのが難しかった。

家の整備に勤しみながら、そして息子たちの日中の笑顔に喜びながら、ここではじめて「自宅以外に職場を持つべきではないか」という考え方が生まれてきた。

「神山町と言えばいろんな分野で『面白い人』が集まってると聞く町。ならば、自宅で仕事をしているとそんな人達とはずっと会えないままではないか?」

ああそうだ。そうにちがいない。マンションだろうが一軒家だろうが、実際に家で働いていたら俺一歩も外に出ないもの。息子の送迎とジョギングくらいにしか出なかったもの。そういう考えが引っ越してすぐにひしひしと募ってきた。
だいたい、ひとりで引きこもってしまっていては、神山町はおろか徳島県でのデザインの新しい仕事すら生まれないのではないか。だって俺がこの町で誰からも知られないんだもの。引きこもってると。

そういう考えに至り、NPO法人グリーンバレーが運営するシェアオフィス・サテライトオフィス「神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス」というところに入居させていただくことになった。家でつかっていた仕事棚をそのまんま移設した。たくさんのデザイン資料や撮影道具を置かせてもらえることにもなり、自宅もすっきりした。ああ、自宅と職場を分けるってこういうメリットがあるのか、と今更ながら実感した。(【2】に続く)

コンプレックスでの職場風景。鉄扉を開けるとすぐ外。ガレージでデザイン仕事をしてるような気分。

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