パン屋のための第一歩

in 思考の果実

デザイン事務所に加えてパン屋を営むべく、食品衛生責任者の講習会に参加した。

こういう講習の類は自動車免許証更新のアレみたいなイメージしかなく、参加する前から「めんどくさいなあ」と思っていた。取ったことのある人に聞いても「眠たいっすよ」と答えてくるばかり。試験も無く、講習料を払って座学を受けるだけで得られる資格。でもこれがないと何も始まらない資格だ。

行ってみるといろんな人たちが集まっていた。運転免許のアレと違う点があるとすれば、あからさまにガラの悪い人たちが座っていないということと、講師陣がみんな高圧的ではないというところだろうか。

「めんどくさいんだろうなあ」「たいくつなんだろうなあ」と始まる寸前まで思っていた。テキストは食品衛生法の衛生法規からはじまり、なぜそんな法律ができたのか? というあたりから順に話が進んだ。

「今年は有毒植物による死亡事故が多かったんです。たとえばこの有毒植物『イヌサフラン』は『ギョウシャニンニク』と似ている。みなさんご存知の毒草『トリカブト』は料理に使える『ニリンソウ』に似てる。これらはどれも意外と身近な場所に生えてるんです。普通にウチの畑に生えてたからそのまま使ってみたら間違っててアウトだった、ということも多いんです。
あと今年一番有名だったのは、ニラと水仙の葉が似ていて、学校の調理実習で水仙の葉っぱで餃子をつくったら食中毒がおこった、というのがありましたね。水仙系の葉はみんな毒性がある。ちなみに『ヒガンバナアルカロイド』っていう有毒成分で、彼岸花をはじめ水仙系はみんなアウトです」

!! なにそれ? 面白いなその話!

彼岸花は確か球根にも毒性があって、だから昔から田んぼの畦やお墓周りに彼岸花を植えて獣害を防ぐ結界のように使っていた、という話は知っている。でも、水仙全般に「ヒガンバナアルカノイド」なる毒性を有しているなんて知らなかった。「彼岸花アルカノイド」なんて書くと椎名林檎が歌ってたって不思議じゃなさげなネーミング。そして、ウチの子がうっかり水仙の葉っぱを食べたとしたら……と思うと知っていて大変有益な情報だ。紫陽花の葉っぱにも毒があり、青紫蘇と間違えて刺身に添えたら当たった、というニュースもたしか今年あったが、水仙全般もか……! 思わず熱くなる僕。

「また、最近急増してるのが『カンピロバクター』による食中毒。これは特に鶏が保菌してて、少量の菌でも発生します。潜伏期間が2〜5日と長いので発生源がわかりにくく、新鮮な鶏肉にもついているし、ブロイラーじゃなく健康的な育成をした鶏でも関係無く保菌しています。国内で流通する鶏肉の67.4%に付着しています。もはや付着は防げないんです。だから鶏肉の刺身はアウトです。またやっかいなことに、この菌は表面だけに付着するのではなく、肉の内部に進行していくので、中まで火を通さないと死にません。さらに怖いのは、この菌は『ギランバレー症候群』を引き起こす因子でもあるんです」

マジで!! 食中毒っていうとサルモネラとかノロウイルスくらいしか聞かねぇよ!! NON-GMOだったら鶏は大丈夫だ、と思ってたらそうでもないのかよ!ギラン・バレーって言うと大原麗子や安岡力也の死因の!

といったマメ知識が、それも今の自分たちの暮らしに案外直結するマメ知識が多く、眠たくなるどころかとても面白く話を聞いた。食品衛生法面白い!と思った。(周りはだいたい寝てるけど)

この歳になっても新しい知識を習得するって、すごい面白い!と素直に思った。

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