聞き書きの手法

in 思考の酵母

だから聞き書き甲子園の高校生たちには、つまらないと思うような日常的なことを聞きなさいって言うんです。
例えば「毎日何を食べているのですか?」って聞くようにとか。

「炭焼の仕事をしている人は、すぐに食べられるし、水分補給も兼ねてお茶粥を食べている人が多いよ」というように。
職業によって食べものもちがってくるはずですから。

「漬物は、沢庵なのか茄子なのか、というようなくだらないこともきくんですか?」

「もちろん聞きなさい。茄子ならどちらからかじるか、ヘタからかじるかも訊ねなさい」

「ほんとですか?」

「考えずに済むことをしゃべっている時には、まちがいなくほんとうのことを言ってるんだから、そういうことを聞くんだよ」って。
糸井 ほんとのことを言いつづけていると、ほんとのことしか言えなくなるというか、なんかスリップストリームみたいなものに入るんですよね。あれも聞き書きの快感ですね。

塩野 「人生」を訊ねるとありふれた話をするからそれは聞かなくていいんです。ごはんの食べ方だとか箸は誰が作っただとかでは人はウソをつかずにすぐ答えてくれますから。

糸井 「人生って何だ?」とか「幸せって何だ?」とかって、窮して出てくる答えをおもしろがるというテレビでの流行が、いつしか根づいてしまった問いなんでしょう。数字や知識の助けを借りない実感を豊かに持っている部分が、人間のおもしろさなのに、ね?

 

ほぼ日刊イトイ新聞 -聞き書きの世界。

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