パン屋がはじまる(1)

in 思考の果実

11月の25〜27日に開催される「4K徳島映画祭2016」で、パン屋として出店することになった。出店は26日と27日。ついにパン屋がはじまる。

この映画祭は2回目なのだが、今回は「神山でかつて栄えていた寄井商店街を劇場商店街にする」というコンセプトを掲げていて、飲食・物販からワークショップまで50の屋台が並ぶこととなっている。そのうちのひとつとして、僕らが「自家製天然酵母のパンとスープの店」を出店することになったのだ。

僕らが神山町に引っ越してきた理由の一つに「パン屋を(も)したい」がある。数少ない夫婦共通の夢、パン屋。大阪でやろうと思うとまず家賃が高いだろうし競争相手も多すぎるから、スタートアップがかなり難しそう。でも田舎なら家賃は安いし競争相手も少ないから、始めやすいのではないか。そう考えて、どこの限界集落に引っ越そうともパン屋を(も)やろうとは思っていた。
また、デザインの仕事は「依頼あっての仕事」だから不安定だけど、「自分の手で売り物をつくって売る仕事」をそれにプラスさせると安定しやすいのではないか、という狙いもあった。デザイン事務所がカフェを運営するというケースは意外とよく見られるが、あの「お互いの仕事を内容的にも経済的にも補完し合う」というのを自分もやってみたかった。単にコーヒーとお菓子を出すカフェよりも、無店舗販売でもパンを売るほうが儲けやすいんじゃないか? とも推理する。

たしかに、それだけを聞くととても楽天的な考えかたかもしれない。実際には神山町は移住希望者が殺到する限界集落で、したがって空き家や空き店舗は全然無い。だから、たとえ家賃が安いだろうと踏んでいても、物件自体がそもそも無い。
また、都会より田舎のほうが競合他社が少ないとは言えど、買ってくれるお客さんの数は田舎のほうが絶対的に少なすぎるわけで、開業しやすいかもしれないが儲けにくいかもしれない、ということも考えられる。

ただ、ここ神山町は全国の田舎の中でもいろんな方向から話題性があり、注目を集める町。毎日毎日視察や見学は山のようにやってくる。だから町民向けだけでなく、町外から来られる人にも買ってもらえる飲食ならば、まず複業としてやっていくならば、まだ十分可能なのではないか、と考えた。ましてやパンなら持ち帰って食べることができて場所を選ばないから、飲食ブースを用意しなくてもいい(でも、最終目的は「楽しく食べたり話し合えたりできるたまり場」をつくりたいと考えている)。
神山町は徳島県の他の田舎より都心に近く、徳島市までクルマで30分もあれば来れるという立地もプラスに働くのではないかとも考えた。
そして、パンを製造する場所を持たなくても、この町には町民が使える超古いパン焼き用のオーブンがあったり、とある町民が「シェアキッチン」を建設中だったりしていた。だから、まず焼く場所を構えないと無店舗販売すらできない、という状況ではなく、パン屋をはじめるハード側のハードルはむしろ低そうなのだった。

そしてそもそも「酵母を起こしてパンを捏ねて成形して焼く」という作業は夫婦ともに楽しいと思える作業だし、食べてもらってその場で喜んで貰えるというのは、シンプルにやりがいを感じた。これも合わせて生計に役立てるって、素直に楽しそうだと思っている。

 

だから、今回の出店を誘われたのは「渡りに船」だった。それから、一食分をどれくらいの価格帯に決めて、どんなパンを焼けばコストが合うのか、それに「僕らが提供したいパン」をすりあわせていくのを夫婦で考えあった。

(2につづく)

とにかく試作の日々

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