スペルト小麦パンの始動

in 思考の果実

どうすればダレやすい生地をよい形のパンに着地させることができるのか。どれくらいの分量の小麦ならば「食べ応え」と「価格」のバランスが取れるのか。それを1月初旬からずっと試し続けていた。

ダレやすい生地で美味しいパンをつくる。それを実行に移すためには、大きく二つの道があると考えた。「ダレないような生地づくりをする」という方向と、「ダレやすくても美味しく焼ける製パン方法にする」という方向だ。簡単に言うと前者なら「正解の入口を磨き出す」ということであり、後者なら「相応しい出口を選択する」ということになる。

ダレないような生地づくりを身につけようと思うと、かなりの作業量がかかると考えられる。たとえば水分量から元種の種類、捏ね方、発酵方法や寝かせ方、各段階で時間をどのようにとるかなど、パンにするための作業工程の中のさまざまな因子から、効果的なものを調べては取り入れて、組み立てていかねばならない。完成するまで相当の時間がかかるはずだ。

となると、僕ら夫婦が「まずはやってみよう」という思いで選んだのは後者。「ダレやすくても美味しく焼ける製パン方法にする」だった。
まず普通に思いつくのは「型に入れて焼く」だが、先述のとおり食パンはできるならば避けたい(売れそうにないから)。そうじゃない方法で、ダレがちな生地でもしっかりふっくらと焼く方法はあるのか。粉の分量・生地量と食べ応え感と値ごろ感が一致するようなパンがあるのか。(粉が多すぎると高くなるし、少なすぎると安くなっても食べ応え感が小さい)

幾種類かのパンを試してみて、見つけた。ベーグルだった。

スペルト小麦のベーグル。チョコ&はっさくピール、小豆、カレンツレーズン+シナモンなどを入れたりしてる。

ベーグルは輪っか状に成型してからお湯で茹でる。そのレシピは調べれば調べるほど実ははっきりしていなくて、二次発酵をしてから茹でるレシピもあれば、二次発酵をせずに茹でるレシピもある。1分茹でるのもあれば2分茹でるのもある。けっこうさまざまだった。でも、輪っかにしてから茹でることで、その「ダレ」がなんとか踏みとどまってくれるのではないか。そう推理して焼いてみたら成功した。

ちょうどその頃、徳島大学の吉田敦也教授から徳島大学フューチャーセンターでのイベントにてパン屋の出店と「デザイナー+パン屋」という働き方についてちょっとトークする、という話をいただいた。そこでスペルト小麦のベーグルを初めて出した。とても好評だった。

徳島大学フューチャーセンターに持って行ったのは、有機黒ごま、カレンツレーズン+シナモン、チョコ+はっさくピールの3種類。しっかり完売してくれてなにより。

それから「もっと神山町外にパンを売る方法を考えないといけない」と考えるようになり、かねてから食品を買わせていただいていた徳島市の自然食品店「ぱんぷきん」にて、今週からベーグルを少しずつ販売させていただけるようになった。

自分の眼の前じゃないところで売る、という怖さを初めて知った。売れてるといいな……。

神山町内では今月から新しいパン屋が堂々誕生したので、昨年末からの計画を大きく変更してるところ。もっといろんな方法を試行錯誤してはドライブさせたり立ち止まって考えたりしながら、僕ら夫婦だからこそできるパンの売り方をデザインしていきたい。

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