思考の酵母 ‘デザイン’

和貴の風車

in 思考の果実

この夏休みは和貴の生活科の宿題、というものにも頭を悩ませた。

生活科の宿題というのは、生活の中で関心があるものを観察して、なんらかのかたちにまとめて報告したりする、というものだった。

観察するのはまだいけると思う。たとえば今年から持つことができた畑に住む虫をできるだけ調べ、カメラで撮ってプリントアウトし、紙に書いてまとめる、とかいうことも不可能ではないかもしれない。

でも、先に言ったように本人は「書く」ということをとても嫌がる。文章を綴ることがもう少し得意になってきだしたら、好きになってくれて、どんどん自分から書いてまとめたがるのかもしれない。でも今は好きじゃない。どうすればいいのか。 (さらに…)

連続対談「つくるということ」によせて

in 思考の酵母

ここ3年余りで、レクチャーや対談、ワークショップなど公の場での講演活動を沢山やりました。大小含めば100を超える回数です。制作を主な仕事とする僕にとっては、異常な数です。僕の半端なキャリアや一時の認知度と、デザインやアートディレクションという領域の仕事が注目された時流と重なって、そんな状況にあったのだと思います。デザイナーが人前に出て壇上で話をすることは、なにか筋違いとも思いつつ、直接的に不特定多数の観客と関わることは新鮮な体験でした。やり直しがきかない「ライブ」という伝達手段への興味も手伝って、時間の許す限り、そのような依頼を引き受けてきました。(もちろん、販促や仕事の宣伝効果という目論見も少なからずありましたが)

僕がつくるということを仕事にして、15年ほど経ちます。七転八倒しながらなんとか社会の隅っこで、食べていけるようにはなりました。しかし、自分のこれまでの仕事を顧みれば、何か大きなものが欠けているように感じてなりません。それぞれに懸命につくったものであることは確かで、少なくない愛情もあります。それでも、今の制作態度、技術では、近く限界が来るように感じています。

デザイナーという仕事の多くは商業と密接に関係する仕事なので、社会と協調しながら、デザインの生産体制をつくり、利益効率を優先する仕組みをつくることも可能です。しかし、それだけでは回収しきれない仕事でもあります。どんな目的があれ、どんな機能が付け加えられても、それまでに存在していなかった「なにか」を立ち上げなければ、ある種の引力を引き起こすことはできません。

これはデザインの分野に関することだけではなく、あらゆる「つくること」に通じることだと考えています。ただ、一つの専門的な技術や方法に深く潜り込んでいかないと見えない、専門の先にある普遍的なものがあるように感じています。僕はいま、それに触れてみたい。できることなら、自分の手をとおして目に見えるものとして立ち上げたい、という欲に駆られています。

僕はもうすぐ36歳になります。平等に言って、中年です。まだ若いとは言えなくはないですが、ものをつくる上で、今しか鍛えられないものがあるように感じています。肉体に例えれば、持続性のある筋肉のようなものを。それを鍛えるには、もうあまり時間がない、そんな切迫感の中にいます。そして、それはおそらく一人でしかできない種類のトレーニングです。

そんな中で、公開で講演や取材をしばらくお休みしようと思っています。「有名人気分でメディアに出たり、先生気取りでおしゃべりしながら、筋トレに集中できない」からです。しかしながら、これまでにしゃべり散らした責任と、もはや仕事の一部と化していた講演活動の括りに、自分の本当に聞きたい、話したいことで終わりにしたいと思いこの連続対談を企画しました。本を売るための話でもなく、営業用のおしゃべりでもありません。なにかの解説でも紹介でもありません。しっかりとした「筋力」をもった方々と改めて話したい。そういった個人的で切実な欲求からはじまるものです。

ご登壇いただく方たちは、単に「好きなものを創った尊敬する人」では、言葉が足りません。作品への敬意は前提ですが、それだけではなく、同時に不快感や敵愾心、疑問や懐疑を感じ、僕を揺さぶり続けている方々です。そして、ぶれない一貫した姿勢をお持ちの方たちです。対談のテーマは「つくるということ」。加えて言うならば「孤独と戦うことは世界と戦うことでもある」ということです。
正直なところ、どんな内容になるかはじめて見なければ、僕自身にも分かりません。が、討ち死に覚悟で本気で話します。予定調和にはなりません。

多くの方にこの場を共有していただければ、嬉しく思います。

連続対談「つくるということ」によせて ー菊地敦己

デザインプロデューサーに聞く

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1.プロデューサーとはどのような役割を担う仕事を意味しますか?
そのプロジェクトで力を発揮する人々の「器(うつわ)」になることです。

2.プロデューサーに一番必要な資質、能力とは何でしょうか? その理由も併せてお答えください。
プロデューサーという仕事は、極めて属人的な能力や魅力を足がかりにした仕事だと思います。つまり、プロデューサーになる奴はほっといてもなるし、人々の方もプロデューサー的な存在を必要とするので、資質がある人のことは放っておかない。一番必要とされる資質・能力とは、何よりも、その人自身であることです。お金や人材など必要な資源を揃えることもありますが、なにより大きいのは、「この人とやっていれば大丈夫。うまくいく」という感覚が、メンバー間で共有されることです。

3.あなたがプロデューサーとして立つ場合、大事にしていることはなんですか?
プロジェクトに関わる一人ひとりの気持ちが鬱血しないよう、悩みも思い付きも、自由に話せて、互いにそれを聴き合える関係を保つことです。

4.あなたがプロデュースしたお仕事の中で、最も手応えのあったものはなんですか? また、その理由も教えてください。
ウェブサイト「イン神山」/徳島の山間部にある神山町という町から国内外とコミュニケートするためのウェブサイトでは、きわめて人間的なつながりの中で仕事を行えました。当たり前のことかもしれませんが、請ける側にも依頼する側にも、「やらせていただく」「やっていただく」といった、謙虚なあり方が大事だと思います。

5.デザイナーに必要な「プロデュース感覚」とはなんでしょうか。
仕事の局部的な品質ではなく、その仕事が求められる背景から、つくられる現場、それが届いていく先、そしてその仕事がこの世から無くなる(プロダクトでいえばゴミになって捨てられるとか、事業自体が消えて行くとか)ところまでを含む、「社会におけるその仕事の全体像」を見通す視力にあると思います。

西村佳哲(雑誌「デザインの現場」より)

目利き

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デザインとはまだ世に出ていないもの、これから世に出るものに施されるものです。つまり未来の世界を具現化するのがデザイン。だからデザインを選ぶ仕事は、「目利き」でないと無理です。民主主義が機能するのは、ものができてから。つまり、誰かがデザインした商品を、実際に消費者として購入する瞬間。そのデザインが本当にいいものかそうでないかは、市場という民主主義が決める。だからデザインの良し悪しについては、企業の中の“目利き”が判断しなくてはならない。もし社長が、「自分は“目利き”ではない」と思うなら、“目利き”を側近に配することが大事なわけです。多数決でデザインを決めては絶対にダメです。

佐藤卓「民主主義」が「デザイン」をダメにする:日経ビジネスオンライン

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「佐保川ラジオ」のデザインについて

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今年の5月末に奈良県立図書情報館にて行われるイベント「佐保川ラジオ」のフライヤーデザインをさせていただいた。宝塚の怪人・メディアピクニックの岩淵さんとスキマインダストリーズの浅利さん、そして図書情報館の乾さんによる企画。いつも前例のないことばかりカタチにしていかれる方々の仕事だ。

このイベントは、奈良県立図書情報館という「図書」だけでなく「情報(デジタル等の)」も扱うという先進的な図書館にて開催するイベントであり、その内容とは「図書館内に2日間だけインターネットラジオ局を開局し、ラジオ番組を持ち寄って、聴き合い、話し合う。そうすることでまた新たな文化を発信する、というもの。その2日間の放送は当然録音され、DVDなどのメディアに記録されて、その音声まるごと図書館に収蔵される。
なにも図書館は本のみを収蔵するものではなく、音声データも収蔵して構わないんじゃないか。だったらそのソフトごとイベント化して、来館者と楽しみながらつくり合ってしまったらいいんじゃないか、という他の図書館ではまず実現し得ない不思議なイベントだ。 (さらに…)

モノづくりをする上で必要な素養

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探究心や貪欲さがないと作るモノの完成度は一向に上がらないんじゃないかと。実際作ってみると直面するのが、なんとなくの完成イメージを持っているのに、作ってみたら全く及ばないという状態。審美眼も大事ですけど、それだけでは良いモノは作れないんです。

レイアウト力、造形力など、ほぼ全てにおいて、余計なことを考えずにひたすら手を動かしてトライし続けることでしか突破口は開かれないんですよね。例えばフォントやピクトグラムなどを作っていると、直線と曲線の接合部分の違和感や、気持ちよくないカーブに直面することが多々あります。その際、該当部位とだけ延々格闘したりします。そうすると“身の回りのただの曲線”に対する解像度がやたら上がるんです。「このカーブはキレイだけど、こっちのカーブは汚い」とか(笑)。

モノづくりをする上で必要な素養は、探究心、審美眼の強化、腕力、観察力、洞察力、想像力と色々ありますが、自分にとって何が足りてないのかを自覚することが第一歩ではないでしょうか。

第2回:DELTRO 坂本政則 (3) | デザイナーのこれからのキャリア | JDN より